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チコちゃんに叱られる僕は何を叱られているのだろう?

投稿日:2018年8月6日 更新日:

知らないを取り繕う

5歳の女の子チコちゃんが小さいからだをくねらせながら、MC役の岡村(ナインティナイン)にたずねます。

「このなかで〇〇〇なひとはだあ~れ?」

岡村に指名されたゲスト回答者は、チコちゃんに誰も思いつかないような突拍子もない質問を投げつけられます。

がん首揃えたおとなの中で最も〇〇〇に詳しいはずのゲスト回答者は、メンツを立てようと、知らないながらも、それを取り繕いながら、有り合わせの知識を寄せ集め、答えを導きだそうとします。

とんちんかんな回答でもしようものなら顔を真っ赤に膨らませたチコちゃんに「ボーっと生きてんじゃねえよ!」と叱られてしまいます。

ちなみに辛くも正解に近いことを言えば「つまんねーやつ」と袖を振られるのでチコちゃんのへそ曲がりには賢いおとなも振り回されっぱなしです。

これはNHKの雑学クイズバラエティ「チコちゃんに叱られる!」(放送:NHK総合 毎週金曜 午後7時57分 | 再放送:毎週土曜 午前8時15分)のお決まりのパターン。こうしたやりとりによって設問が投じられ「へえ~、へえ~、へえ~」な雑学が視聴者に披露される仕組みです。

 

不健全な自己顕示欲

僕は番組中、答えの体を整えようとする回答者に人間の不健全な自己顕示欲を感じるのでした。

自己顕示欲は自分という存在を社会の中で確立させるための重要な精神です。自己顕示欲がなければ競争も成長もなく、人類は今日の繁栄を築くまでに至らなかったでしょう。

一方、自己顕示欲は人間を小賢しさの迷路に導きます。

冒頭でご紹介した番組のお決まりのやりとりが僕たちの本性を切り取って秀逸なのは、この「不健全な自己顕示欲」を白日の下にさらけ出し、さらに「小賢しさの迷路」から目を覚まさせてくれる点です。

チコちゃんは小っちゃい僕たちの精神を顔を真っ赤にして真剣に叱り飛ばしてくれます。

 

チコちゃんの本名は「知子」!?

chikochan01チコちゃんの本名を想像したことがありますか? 番組のホームページをのぞいてもどこにも書いてありません。

最初「千恵子」「千代子」「千賀子」などを思い浮かべましたが「チエちゃん」「チヨちゃん」「チカちゃん」など、どれももっとふさわしい略称があります。

そこでさらに熟考して思い至ったのが「知子」でした。

その読み方が「ともこ」であるとすれば略称は「トモちゃん」が一般的です。でもお友達に利発な子がいたら、ひとひねりして「チコちゃん」と呼ぶのではないでしょうか。

賢者によって見出された呼び名「チコちゃん」は「知」のイコンとして位置づけることが可能です。

 

論語が教える「知る」の意味

孔子の言説をまとめた「論語」には「知る」の意味を述べたつぎの一節があります。

子曰く、
由、汝に之を知るを誨えんか(おしえんか)。之を知るを之を知るとなし、
知らざるを知らずとなす。是れ知るなり。

先生がいわれた。
「由君、君に『知る』ということを教えようか。知ったことを知ったとし、知らないことを知らないとする、それが『知る』ということだ」

出典:論語 為政第二 十七章 (タチバナ教養文庫 吉田公平)

chikochan02番組で正解を必死に導き出そうとする回答者はまさに「知らないことを知らないとする」境地にほど遠く、「知る」に至らない状況を如実に表しています。

その状況を顧みもせず、じたばたする愚かさを「知」のイコンであるチコちゃんは孔子に成り代わり叱り飛ばしてくれるのです。

ちなみに「わかる」は「分ける」ことだという論説はこの孔子の教えに通じるものと考えます。

 

洗練された「脳の外在化」

現在、僕たちはかんたんに正解を得ようとする者に若干の軽蔑を込め「自分でググれ」と言います。説明するまでもなくそれは「Googleで検索してみろ」という意なのですが、ここに現在の「知」のありようが象徴されているように思えます。

能楽師である安田登氏は「知」についてつぎのように述べています。

知とは「脳を外在化」させた結果、生み出された新しい精神活動
脳を外在化するための装置が文字

出典:“紀元前に起きたシンギュラリティからの「温故知新」:能楽師・安田登が世界最古のシュメール神話を上演するわけ”WIRED

chikochan03つまりひとは文字を得た瞬間から「脳を外在化」させてきた。

現代社会は文字を電気信号に変え、膨大な「知」空間を外在化させています。「ググる」ことで僕たちはもうひとつの脳から「知」を光速で手に入れることができるようになっています。

AIはほかのAIとの「知」の交換のため自ら新しい言語を作っているといわれます。「知」の共有のその先にAIでさえも「外在化」を求めているとしたら、それは偶然ではなく「知」的活動の原則なのかもしれません。

 

「知」の未来を示唆するチコちゃん

「脳の外在化」を踏まえ、チコちゃんは、僕たちに「知」の未来について重要な示唆を与えてくれます。

「ボーっと生きてんじゃねえよ!」と叱ったあと、チコちゃんが教えてくれる雑学と僕たちの「ボーっとした脳」との間には、大きな壁が立ちはだかっていることに気付かないでしょうか。

つまりどれだけ「脳の外在化」に取り組んでみたところで、「知らない」ことを「知らない」ままでは、いつまでたっても「知る」ことができないということです。

チコちゃんは「知らない」ことを叱っているのではありません。「知らない」ことを「知らない」ままでいる僕たちの怠惰を叱っているのです。

チコちゃんの説明のあと、番組では必ず専門家のご意見を紹介します。そこに「知」は確かにあるのです。しかしアクセスしようとしなければその「知」は眠ったままです。

さまざまなインターネットサービスが個人情報の集積から好みを分析しレコメンド(おすすめ)機能を先鋭化させています。その快適さに浸っているだけでは、外在化した脳から真に新しい知見を得ることはできないでしょう。

「脳の外在化」を洗練しつくしそうにも思える現代社会にあって、チコちゃんは警鐘を鳴らしているのではないでしょうか。

この世界に疑問を持つことこそ「知」である。

チコちゃんに、僕はいま猛烈に叱られています。

 

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sunnydayfunny

昭和半ば生まれのおじさんです。妻と娘と猫と金魚と東京西部にひっそり暮らしています。息子夫婦に孫娘ちゃんもいます。「くらしとこころにそらより」うるおいを降り注ぐ記事をめざしています。

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