僕の些細な欲望は、社会を疲弊させている

投稿日:2017年3月6日 更新日:

 

きょう東京は昼頃から雨になるという予報だった。歩いて行って途中で降られるのはかなわないので、9時過ぎには家を出て、税務署に向かった。

 

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この時期は年末の会社の決算から3月の夫婦の青色申告まで、会計ソフトに向かうのが仕事のような日々が続く。いくら数字いじりが好きだとはいえ作業自体は単調だから気乗りしないときもあり、予定が遅々として進まない。しかも今年は娘も確定申告が必要になり、結局家族3人分を請け負った。いくぶん憂鬱な毎日だったわけだが、日曜日にすべてプリントアウトし、娘の開業届け、青色申告届けも書き終え、ようやく本日の提出となった。

午後は予報どおり雨となり、このところの花粉の飛散でムズムズしていた鼻奥がまったく気にならなくなった。そこで僕はようやく「騎士団長殺し」の扉をめくった。

じつはこの本、発売日当日にAmazonで注文し、夕刻に届いたものだ。それは2月24日のことで、きょうは3月6日。じつに十日が経過している。そのあいだ、本は暗い部屋の冷たい机の上に放置されていた。

そんなにあわてて取り寄せなくてもよかったのだ。ただ僕のお祭り気分は「本日中にお届け可能」の文字に釘付けになっていた。どうせ買うのだからと小躍りするように注文したのだった。

作家はひと回りほど年上だが、小説作品はすべて新刊を読み続けてきた。発売当日に徹夜で読破した時代もあったが、いまはそれほどの情熱はない。それはわるい意味ではなく、ただ落ち着いて向き合えるようになったということだ。

僕は読書が早いほうではない。会社に通勤していた頃は相当重い本でも持ち歩き電車で読んだ。それが仕事場が自宅になってからというもの、ますます時間がかかるようになった。「沈黙」を買ったとツイートしたのはいつでしたっけ。あれだって読み切るまでに数ヵ月かかっている。「死に至る病」などは、テーマの重さと精緻を極める文章の解読で1年以上かかった。それほど呑気で、遅い。

本というものは、僕は、ゆっくりかみしめながら読むものだと思っている。途中で数週間止めることなどざらだ。そのあいだに言葉とその世界を反すうし、意味を考え、余韻を味わう。だから、本当にあわてて取り寄せなくてもよかったのだ。

もしも注文を発売日の翌日に延ばし、通常配送にしたらどうだったろう。当日配達してくれたあの人は、1件分の予定が減り、15分早く家に帰れたかもしれない。もしも逆の立場で、届けたその本がけっきょく数日間放置されたことを知ったなら、若干の疲労感を味わっただろう。

僕のあのときの些細な欲望は、じつはギリギリで回っている社会のエントロピーを不要に増大させ、疲弊させている。どんどん便利になっているので気づきにくいが、欲に鈍感になっているのだ。たまに立ち止まって見回すことが大事かもしれない。

 

 

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sunnydayfunny

昭和半ば生まれのおじさんです。妻と娘と猫と金魚と東京西部にひっそり暮らしています。息子夫婦に孫娘ちゃんもいます。「くらしとこころにそらより」うるおいを降り注ぐ記事をめざしています。

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