金木犀の香りが嫌い

投稿日:2016年10月1日 更新日:

2016年10月の言葉

猫シルエット

 

DVを受けていた彼女は、離婚調停を申し立てました。その結果、なぜか幼い子どもたちの親権は夫に。身の回りのわずかな品を手に、家族と住んでいた社宅を出た日。生垣の金木犀が辺り一面に芳香を放っていたそうです。

kinmokusei

夫と同じ会社に勤務していたため転職は仕方ないことでした。実家に戻った彼女は車で2時間近くかかる遠方に新たな職を見つけます。早朝のバイパス道路を時速140kmで走りながら、ふとハンドルを切り込む衝動に駆られたそうです。激しく揺れる車内にはキンコン、キンコンと警告音が鳴り響いていたことでしょう。彼女はその修羅から抜け出すのに数年かかったと言いました。

ある日、何も知らない僕は金木犀のいい香りがすると彼女に話しかけました。間髪を入れず「私は大嫌い」という答えが返ってきました。

花や鳥、蝶、木の実、雲…、はかなく存在するものたちに、僕たちはさまざまな印象を持ち合わせています。そしてその受け止め方にどうやって生きてきたかという個性がちょっと現れたりする。彼女は「金木犀の香りが嫌い」という個性でした。

彼女のあの個性は、今も凍土のようにかたまったままでしょうか。好きな花の香りは何だったのか、聞いておけばよかったな。

 

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sunnydayfunny

昭和半ば生まれのおじさんです。妻と娘と猫と金魚と東京西部にひっそり暮らしています。息子夫婦に孫娘ちゃんもいます。「くらしとこころにそらより」うるおいを降り注ぐ記事をめざしています。

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