畳座敷にツバメの巣を招き入れた昔の家。可愛い神様との暮らしがありました

投稿日:2016年5月11日 更新日:

 

ツバメにとって巣作りをしにくい時代なのだそうです。家の軒先に巣を作ろうとしても、すぐに人間に壊されてしまうとメディアが報じていました。

 

ツバメの巣

 

幼い頃、実家は農家で周囲に田んぼが広がっていました。

昔の大工さんの言葉で「ゴックの家」。奥行き5間、幅9間の古いかやぶき屋根の母屋には、季節になるとよくツバメが巣作りにやってきたものです。軒先なんて、甘いものではありません。畳の広がる座敷の真ん中に巣を作るのです。

当時は家勢を誇示するため座敷を横断する太い梁に新巻鮭を吊るしました。お歳暮にいただいた品の数を誇ったわけです。大きな干物が暖簾のように並んだ姿は子供ながらに壮観に思ったし、吊るしたまま身が少しずつ切り取られていく姿はオスカー・ワイルドの「幸福な王子」のように少し可哀そうでもありました。

さて、そのために梁に打ちつけられた五寸釘が、春にはツバメの巣作りの格好の土台となったわけです。ツバメはまず軒下を入ったり出たりせわしなく舞い飛びます。家の年寄りはそれを見つけると座敷の戸を広く引き開けます。そして梁の下に新聞紙を広げるのです。まるで福の神を迎え入れるように、うやうやしく。なぜならツバメは害虫を食べる益鳥。農家にとってはありがたい“季節の客人”だったからです。

彼らは近くの田んぼから泥やわら屑をくわえてきて、2日3日で頑丈な土の巣を作ってしまいます。日本古来の建築技術である土壁も、もしかしたらツバメから学んだのかもしれません。

やがてメスが卵を産み、ヒナがかえり、親鳥がエサを運んできます。その一部始終が家の中で観察できました。新聞紙には毎日泥かすや虫の死骸、糞、ときには生まれたてのヒナまで、何かしらの落下物がありました。

ツバメが夜行性であるのかわかりませんが、メスが抱卵する辺りから、夜も戸は開け放たれていたように記憶しています。それまで座敷に寝起きしていた子供たちも、別室に移動です。ヒナが生まれると、早朝に飛び起きて、親鳥といっしょの姿を巣の下からじっと見上げていました。

巣立つまで2~3週間はかかったでしょうか。ぴいぴい鳴いていた子鳥たちは、いつしか外に飛び立った切り帰ってこなくなり、巣はもぬけの殻となります。年寄りがゲンノウでそれを打ちこわし、新聞紙が最後の仕事として受け止めます。

座敷から遠くの里山に目を移せば、すでに光眩しい春。若葉萌える季節の到来です。

 

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