そらより

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本当は恐ろしい!?「グレーテルのかまど」(不気味な妹の不在)

      2016/10/24

 

NHK Eテレの「グレーテルのかまど」(毎週月曜 午後10時放送)をご存じですか。瀬戸康史扮するヘンゼルが、しゃべる「魔法のかまど」(声:キムラ緑子)にさまざまなスイーツの作り方を教えてもらうメルヘンなお料理番組。録画するほどではないですが、ザッピング中に見つけると必ず手が止まり、最後まで観てしまう好きな番組の一つです。

 

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さてその番組のタイトルなんですが、ちょっと疑問に思うことがありまして調べてみたんです。

というのも我が愛しき連れ合いがですね。「グレーテルは姉」だと言うのです。だってほら、番組の最後で「お姉さんお帰り」となるお決まりの展開があるじゃないですか。それを根拠に「姉のかまど」と言い張るわけです。

そこで本家NHKのホームページを見ると、こうありました。

・“大人になったグレーテルたちへ”。
 仕事や子育てなどで忙しい毎日を送る女性たちに

・15代ヘンゼル(瀬戸康史)と魔法のかまど(キムラ緑子)

▲出典:NHK「グレーテルのかまど」

「かまど」の所有者についての具体的な記述はなく、手掛かりになりません。

ただ

・ヘンゼルは男子である
・かまどは魔法の力でしゃべることができる
・姉は仕事に忙しい大人の女性らしい
・姉は大人になった「グレーテル」らしい

ということがわかります。

あれ? ちょっと待ってくださいよ。グレーテルってグリム童話では姉でしたっけ?

 

gretel

 

グレーテルはどこへ行った

正確なところを知るため「ヘンゼルとグレーテル」に関する研究論文を探し出しました。大手前大学の大島浩英氏が2009年に発表したものです。そこでは初稿と初版、ほぼ決定版となった第7版との詳細な相違が述べられています。

氏の論文によると初稿と初版の違いとして

初稿でのBrüderchen(兄)、Schwesterchen(妹)に対してそれぞれHänsel(ヘンゼル)、Gretel(グレーテル)という一般的な実名が与えられることにより、物語に具体性が増している。

▲出典:大手前大学論集『グリム童話集』初稿、初版、第7版における「ヘンゼルとグレーテル」の変化について 大島浩英 著

が挙げられています。

そうですよね。きょうだいは兄と妹でしたよね。ヘンゼルとグレーテルは森の中で見つけたお菓子の家に招き入れられ、老婆によってまず兄が、つぎにまだやせている(と見せかけた)妹が食べられそうになった物語でした。

グレーテルは妹です。

さて、番組に戻りましょう。そう、登場人物は弟と姉、「魔法のかまど」だけでした。グレーテルがいない。おかしいですね。

もしかしたらタイトルに秘密が隠されているのかもしれません。検証してみましょう。

「グレーテルのかまど」の「の」には二つの意味があります。

一つは所有を意味する「の」。

であるとすれば所有者の不在です。どこか遠くへ旅行にでも行っているのでしょうか。あるいはすでに嫁いでしまったか。いやいや天国に? やだ! なんだか事件の匂いがしませんか。

また一つは状態を意味する暗喩の「の」

つまり「母ちゃんの鬼!」の「の」ですね。今回のケースに当てはめると「グレーテルはかまど」という意味になります。え、かまど=グレーテル? どういうことなのでしょう。

いずれにしろ、グレーテルの不在は、トゥルーストーリーの存在をほのめかしているようで不気味です。

 

グレーテルを消した?「魔法のかまど」

forest「グレーテルのかまど」にはもう一つ謎があります。それは「魔法のかまど」の存在です。

ここでもう一度童話に戻ってみましょう。

初稿では「お菓子の家に住む老婆」が初版から

老婆は悪い魔女で、子供たちを待ち伏せし、おびき寄せるためにパンの家を建てた

▲出典:大手前大学論集『グリム童話集』初稿、初版、第7版における「ヘンゼルとグレーテル」の変化について 大島浩英 著

となります。すなわち「老婆は魔女」です。

また

ヘンゼルを食べる前にパン焼き釜でグレーテルをも

▲出典:大手前大学論集『グリム童話集』初稿、初版、第7版における「ヘンゼルとグレーテル」の変化について 大島浩英 著

とあります。

童話に登場する釜は「パン焼き釜」と特定されていることが判明しました。パンが焼けるのですから、お菓子も焼けるでしょう。さまざまなお菓子で彩られた家は、当然この「パン焼き釜」で作られたにちがいありません。

そして物語のクライマックスで賢いグレーテルは

老婆に手本を示すよう依頼し、老婆を釜の中に突き飛ばし

▲出典:大手前大学論集『グリム童話集』初稿、初版、第7版における「ヘンゼルとグレーテル」の変化について 大島浩英 著

fireなんと残忍な所業でしょう。必死とはいえグレーテルによって死に追いやれた老婆の悔しさ、恨みは相当なものだったはずです。

さて、ここから番組の「魔法のかまど」が何であるかを推理します。ヒントは「魔女」と「パン焼き釜」。そう。「魔法のかまど」はあの「魔女」が突き込まれた「パン焼き釜」だったのではないでしょうか。ならばお菓子づくりについてあんなに詳しいのも納得です。

しかし、どうしてグレーテルに恨み持っていたはずの「パン焼き釜」は、いつもご機嫌なのでしょう。

もしかしたらそれは「パン焼き釜」が、すでに恨みを果たしているからではないでしょうか。つまりかまどがグレーテルを食べちゃった。なんとも悲惨なファンタジーですが、それならグレーテルの不在もつじつまがあいます。

 

秘められたトゥルーストーリー

これまで検証してきたことから「グレーテルのかまど」には、つぎのような真実の物語が裏に存在すると考えられます。

ある家に引っ越してきた兄と妹。
たまたまヘンゼルとグレーテルという名前だった。
しかし、そこにあったのは
あの魔女が乗り移った「パン焼き釜」。
その偶然の出会いが悲劇の始まりだった。

ある日、兄に食べさせてあげようと
お菓子作りをしていた妹グレーテルは
兄の目の前で
恨みを持つかまどに飲みこまれてしまう。
かまどの呪いによって
老いを止められた兄は
恐怖におびえながら
お菓子を作り続けなければならない
無間地獄に陥る。

妹グレーテルがもしも生きていれば
今年はいくつになっただろう。
そう思い続けているうちに
いつしか兄の年齢を超え、
彼女を姉と思い込むようになっていった。
気の狂った兄ヘンゼルは
姉と慕うグレーテルの帰りを
永遠に待ち続けるのだった。

しかし彼の望みが果たされることはない。
なぜなら「グレーテルはかまど」だから。

 

僕の説を信じるか、信じないかは、あなた…あ、ちがう番組か?

 

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