実家の正月飾りを片付ける際、藁に結んだ橙(だいだい)がまだみずみずしく、すてるのはもったいなく思えたので、家に持ち帰ってきました。
橙はポン酢の材料になるというだけあってそのままではとても食べられたものではありません。ただその文字どおりの明るい橙色が目に鮮やかで、部屋の飾り物としては最適です。そこでダイニング・テーブルの木の器にバナナや蜜柑、キウイなどといっしょに並べていました。
それからしばらくたったある日。トイレに半切りの橙が飾られていました。なるほどつれあいが芳香剤の代わりに置いたのでした。
初老の夫婦の家には似つかわしくないと思えるほどのビタミンカラーのアクセントです。生身の果実にハッとしましたが、トイレに立ってこのポジティブなセンス。なかなかわるくありません。
もちろん、嫌みのないさわやかなシトラスの香りがほんのり鼻孔に漂います。「自然由来」とよく言いますが、この橙芳香剤は100%天然果実。ひとにやさしいことこの上なしのフレグランスです。
トイレを終えたら、なんとなくおや指とひとさし指でギュッとつまんでしまいました。そのときイメージしているのは果肉からはじける果汁の粒。新鮮な香りが部屋に舞い上がる様子です。
今朝、キッチンでつれあいが橙の半切りの切断面を薄く削り取っていました。表面が乾いたので、切り戻すのだそうです。
輪切りになった片方も裏返して芳香剤になっていました。
例年になく凍える寒さの2月。このひとといっしょになってよかったと思うのでした。
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